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「知道者,法於陰陽,和於数術,・・・」
この文は
中国伝統医学の経典医書『黄帝内経』に記載されています。
意味は
道を知った者は、陰陽に則り、数術に和す。・・・とのことです。
太極拳の「太極」とは実は陰陽の別称であります。
即ち、太極拳という拳法は陰陽に基づく拳法なのです。

では、「陰陽」って何でしょう?

この二つの文字の本来の意味は
太陽に照らされる処或いは部分を「陽」で表示します。
太陽に照らされない処或いは部分を「陰」で表示します。
やがて、文字の意味を徐々に広げて応用していきました。
陽とは
明るい、温かい、高い、早い、硬い、表的、動的、直的、伸展的
などの意味を持たせてきました。
さらにはものの機能性も陽となりました。
陰とは
暗い、冷たい、低い、遅い、柔らかい、裏的、静的、曲的、巻縮的
などの意味を持たせてきました。
機能性に対して、ものの本体は陰に属すこととしました。

こうして陰陽に含有する意味が幅広くなった結果
中国の伝統的な世界観を認識する方法論の一種として
形成されるにいたりました。
それは「陰陽観念」または「陰陽思想」と呼ばれています。
この陰陽思想が
中国古代生活の各方面に浸透、応用されることで
基礎的な理論となり、「陰陽理論」という名称を付けられました。
中国の伝統医学(中医学)は勿論のこと、
文字、占い、料理、建築、音楽、詩歌、舞踊、武術、
…等々多方面において
この陰陽理論に基づくことで皆が発展してきたのです。

太極拳養生もまた、
その名前からもわかるように陰陽思想をそれぞれに体現します。

太極拳(動作)は鍛錬の本体であり、「陰」とします。
養生(応用)は鍛錬の効用であり、「陽」とします。

鍛錬中においては
我々の身体は「陰」に属し、ココロは「陽」に属することです。
内臓組織や各種液体などの体内の部分は「陰」に属し、
筋肉関節などの体表の部分は「陽」に属します。

外観から見たからだについては
体幹部は「陰」として、手足は「陽」とします。
胸とお腹は「陰」とし、背中と腰は「陽」とします。
足は「陰」に属し、腕は「陽」に属します。
手のひら、足うらは「陰」に属し、手の甲、足の甲は「陽」に属します。

太極拳の動きを見分ける場合には
後退、降下、合わせ、円線的、柔らかくゆっくりとした動きは
「陰」に属します。
前進、上昇、開き、直線的、強めに速くした動きは「陽」に属します。

このように、太極拳養生は「陰陽思想」に則ったものです。
健康運動法として利用するだけにとどまらず
伝統的な文化を取り込んだ養生法だと思って鍛錬を行うほうが
またひとつ楽しみが増えるのではないでしょうか。